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Vier Minuten
4分間のピアニスト (2006) Germany 116 min.
Introduction 序盤アウトライン
21世紀初頭のドイツ。300人の女囚を収監する刑務所に1台のグランドピアノが運び込まれる。これまでは刑務所内のピアノ教室も僅か4名の生徒だったが、やがて募集広告でさまざまな女囚が集う中、名うての演奏者として鳴らした女性教師のトラウデは、十代の女囚ジェニーの才能に心を奪われる。来るピアノコンペでのジェニーの優勝を確信するトラウデは、やがて刑務所上げてのプロジェクトとしてジェニーの育成に乗り出すが、十代にして殺人の罪を負う中、刑務所内でも暴力沙汰を繰り返すジェニーとの二人三脚はあまりに前途多難なものだったーー
Various Note メモ
訳ありの少女と老いたピアノ教師のスキンシップを描く超ディープな人間絵巻。これは良識ある音楽ファンにも堪らない1本のはず。脚本と監督は"Scherbentanz (2002"のクリス・クラウス (Chris Kraus)。主演は「ホロコースト アドルフ・ヒトラーの洗礼(未)(2002)」「タトゥー(未)Tattoo (2002)」のモニカ・ブライブトロイ (Monica Bleibtreu)、"Bummm! (2006)"のハンナー・ヘルツシュプルング (Hannah Herzsprung)。モニカ・ブライブトロイは「ラン・ローラ・ラン (1998)」「es エス (2001)」「ミュンヘン (2005)」などで知られるモーリッツ・ブライブトロイの母。ちなみに98年の「ラン・ローラ・ラン」は、モニカとモーリッツが母子競演も果たした1本。
共演は「GIGANTIC ギガンティック (1999)」「フィアー・ドット・コム (2002)」のスヴェン・ピッピッヒ (Sven Pippig)、「CLUBファンダンゴ (2000)」「トリプルX (2002)」「みえない雲 (2006)」のリッキー・ミューラー (Richy Müller)、「バンディッツ (1997)」「素粒子 (2006)」のヤスミン・タバタバイ (Jasmin Tabatabai)、「ビタースウィート (2002)」「わが教え子、ヒトラー (2007)」のシュテファン・クルト (Stefan Kurt)、「眠れる美女 (2005)」のファディム・グロヴナ (Vadim Glowna)、「アンナとロッテ (2002)」「レボリューション6 (2002)」のナディヤ・ウール (Nadja Uhl)、他。

以下、完全ネタバレ。未鑑賞の方はご留意下さい。
ここでの主人公は、傑出したピアノ演奏の才能を持つ若き女囚のジェニー(ハンナー・ヘルツシュプルング)と、欧州大戦当時の辛らつな過去を背負う年老いたピアノ教師のトラウデ(モニカ・ブライブトロイ)の2人。クライマックスでは最終コンペの大舞台が用意される中、そんな二人三脚での軌跡を情緒豊かに描く内容などと僅か数行にも纏められるアウトラインだが、実の内容はかなりスゴイ。主人公ジェニーの人生と云えば、12歳で養父に犯され、チンピラ彼氏が殺めた実父殺し?の冤罪を被り、そのチンピラ彼氏との間に儲けた男児も流産、収監された刑務所では執拗なイジメが待ち構えると云う奈落の底を絵に描いたようなもの。一方のピアノ教師のトラウデは、欧州大戦当時に惨殺された同性愛の恋人の幻影を引きずる中、60年もの間、ストイックな音楽人生で大戦当時のトラウマを麻痺させていたハードな女性だが、そもそもの話、近親相姦や流産、殺人罪の冤罪や大戦当時の民族浄化など2人の辛酸がヴィヴィッドに描かれる中、同性愛までをモチーフに祖母と孫ほどの年の差の2人の接点を描く内容と来れば、一筋縄では行くはずもない。
と云うか、ここまで盛りだくさんの内容で大コケしなかったのはマジで見事。訳ありの2人が互いの短所を補う中、やがては栄光を掴むようなシナリオと来ればハリウッドなどでは定番だが、ここまでシリアスなネタをはべらせながら、ハリウッドも顔負けの仰々しいクライマックスとは本当に恐れ入る。あのフジコ・ヘミングさんに言わせれば「ドイツ人の気質を現しているような気がします」との事だが、確かに自虐的かつストイックな描写とブラボーなクライマックスだけを取り上げれば的確な指摘ながらも、ここまでてんこ盛りのシリアスなモチーフをサクッと解決させる脚本の手腕は、古今東西、音楽をネタにする数多くの作品でも類を見ないはず。
その理由は簡単。アカデミックなイメージも定着するクラシックをネタにしながら、迎えるクライマックスではインプロヴァイズで締め括っていたので。しかも、正装のオーディエンスもあの即興を手放しで肯定。個人的には、このネタにしてここまでの大ハッピーエンドは全くの予想外だったが、要は、ここでの帰結があったからこそ、てんこ盛りのネタも調和されていたと云う事。満身創痍のまま60年を過ごしてきたトラウデの場合、自由な即興などは人生観をも否定する邪険な存在。自由を返せと言わんばかりの引用や、大衆音楽を邪険に扱うダイアローグも度々登場するが、そんなトラウデが偏見を取り払って自由を取り戻せたのも、クライマックスでのジェニーの即興に「真の芸術性」を垣間見たため。と云うか、消化不良気味のモチーフを調和させていただけに止まらず、音楽全般、中でもクラシック分野に於ける多様性と可能性をアピールする内容はなかんずく意義深い。
仮にあのクライマックスがシューマンのままだった場合、脚本そのものが消化不良のまま終わっていたばかりか、お座なりで無難な演奏を至上主義とする現在のクラシック界をダメにする連中も喜ばせる最悪の結果にもなっていた訳だが、そもそもが開かれた大衆芸術であるべきクラシック音楽をアピールする意味でもこれは限りなくブラボーな1本。と云うか、正装のサクラがブラボーと連呼する雰囲気にはいつもウンザリさせられる地方レベルのクラシック興行だが、最も知的にして、敷居の方も最も低くあるべきクラシックの場合、要は真の意味でのポップスだと云う事。Gパン履いて気軽に足を運べる映画鑑賞にも全く同次元の娯楽だと云うイメージが巷でも定着して欲しい。ブラボーなんかじゃなくてイェ~でもいいんだよね。本当は。
鍵盤楽器にして弦楽器&打楽器の三役をこなすクライマックスはもとより、ベートーヴェンなど劇中でのパフォーマンスもなかなかのもの。主演女優(ハンナー・ヘルツシュプルング)のスキルについては全く知らないが、手錠+後ろ向きでのアクロバットな演奏カットを除けば、これといった問題もなし。と云うか、少なからず上手い。指の骨格も経験者のもの。教師役のモニカ・ブライブトロイの各種演奏カットなど気になるような編集も多少はあるが、そもそもこれは重厚なネタに焦点を合わせる人間ドラマ。ピカイチのテーマや筋立ても然る事ながら、映像的にも及第点以上の内容だった。あとはヒロインのキャラ色。音楽をネタにしながら、ここまでスッ短気な肉弾系のヒロインというのも前代未聞ではないだろうか。配役では約80歳のモニカ・ブライブトロイにも顔面パンチ見舞わしてたし。そんなシビアな内容に終始する中、個人的には一点だけ笑えた箇所も。地方コンペの直前、奨学金の申請について聞いて回る女性係員を前にあっけらかんとしたヒロインが「殺人犯です」と答える中、涼しい顔で受け流す女性係員だが、これには爆笑。と云うか、物凄い作品だなと確信させられたのもこの序盤での「名場面」からだった。



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