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Buongiorno, notte
夜よ、こんにちは (2003) Italy 106 min.
Introduction 序盤アウトライン
1978年、新年。ローマ市内のアパートに極左集団「赤い旅団」のメンバー数名が入居する。プロレタリアートの新政権樹立を目指す一味の目的は、右左が歩み寄る新政権の架け橋となったキリスト教民主党総裁アルド・モロの拉致監禁だった。やがて迎えた3月16日、総裁の拉致に成功した一味は政府との交渉に乗り出すが、テロリズムとの対決姿勢を打ち出す強硬路線の政府との交渉も暗礁に乗り上げる中、やがて成す術もなくなった一味は総裁の処刑を決議する。そんな中、アジトの物陰から総裁の世話と監視に携わっていた若き女性闘士キアラは、人間の命を奪う革命行為に意義を見出せなくなるのだがーー
Various Note メモ
元首相のアルド・モロ(キ民党総裁)の拉致誘拐から殺人に至るまでの経緯を加害者サイドの視点で描く異色の一遍。事件から25年、さまざまな新事実も浮上していた中での1本だが、ここでは操り人形の如く奔走を余儀なくされた若者たちのピュアな心情に的を絞る内容。セルジオ・フラミーニ(Sergio Flamigni)元伊上院議員の暴露本などに言及するような背後事実には全くタッチしていないが、未来を担う次世代の若者に向けられたメッセージとしては重大な意義と説得力がある。社会の恥部にメスを入れながら事件の真相に迫るさまざまな書籍と併せて鑑賞すれば、このフィルムの意義は数百倍にも膨らむはず。P.フロイド(2曲の挿入曲あり)の「狂気」や「炎」を聴きながらリアルタイムの報道を体験した世代にも衝撃の1本。原作"Il prigioniero"は、アナ・ラウラ・ブラゲッティとパオラ・タヴェーラ。共同製作/脚色/監督は「肉体の悪魔 (1986)」「サバス (1988)」「蝶の夢 (1994)」のマルコ・ベロッキオ。

以下、完全ネタバレ。未鑑賞の方はご留意下さい。
ここでの主要キャラは、図書館に勤務する「赤い旅団」の若き女性闘士キアラ(マヤ・サンサ)とリーダーのマリアーノ(ルイジ・ロ・カーショ)、表向きにはキアラの亭主を装うエルネスト(ピエール・ジョルジョ・ベロッキオ/監督の子息)、雑用を担う男性メンバーのプリモ(ジョヴァンニ・カルカーニョ)、キアラの正体も露知らぬ図書館の同僚で事件をネタにシナリオを書き上げるエンツォ(パオロ・グリグリャ)、そして拉致されるキ民党総裁のモロ(ロベルト・ヘルリッカ)と云う総勢6名のメンツ。大方のシーンも拉致監禁の舞台となるローマ市内のアパートで占められる中、他にキアラのプライベートを映し出す数箇所とスポットでのアーカイヴで構成されているが、ついては、ここでのスクリプトも舞台劇の台本のような内容。
事件の外郭部分をリアルなタッチで再現する「首相暗殺 (1986)」との違いと言えば、軟禁状態のモロと接見するメンバーが素顔を隠している事や、女性メンバー(ここでは主役のキアラ。「首相暗殺 (1986)」では名無し)の素性(公務員)とプライベートに触れる脚色などが挙げられるが、やはりその大きな違いは、アパートの外で発生する誘拐の過程や殺害に至る結末を一切割愛する映像。ちなみに、交渉の過程などもスポットでのアーカイヴ映像でサラリと描かれる中、総裁のご遺族に至っては一切登場させていないが、ここでのテーマと視点を踏まえれば、誰もが知る事件の概要を要約するようなスクリプトも当たり前の話。ちなみに、クライマックスでは、国内の議員総勢はもとより大国のVIPなども臨席した国葬扱いの葬儀のアーカイヴが映し出されるが、政府に対するご遺族の怒りと不信感については、喪主となるはずのご遺族は然るべく臨席しなかった事を伝えるナレーションと僅か数秒間のアーカイヴ映像だけでも「首相暗殺 (1986)」でのインパクトを超越している。
結論から言えば、大権力の黒い影に躍らされるかの如く事件に手を染めていたと思われる旅団の若者たちだが(参照:「首相暗殺 (1986)」)、一連の交渉過程での不条理と矛盾も露呈される中、主人公のキアラや表向きでの亭主役だったエルネストたちの葛藤を通じて描かれるリアルな舞台裏は、明確なテーマを構える脚色ならではの醍醐味。誘拐直後の報道番組を前にキアラが歓喜するシーンや総裁側の関係者による交霊会のシーンなど、「首相暗殺 (1986)」にも共通していた事を考慮すれば、各種の供述や証言などが参考にされていた事も確かだが、旅団のメンバーが抱き始める藪の中での矛盾と葛藤については、ここでの大胆な脚色でなければ、陽の目を見ることもなかった貴重な内容だった。「夜よ、こんにちは」というタイトルは、キアラの同僚エンツォがディキンソンの詩をモチーフに書き下ろすシナリオの題名だが、この辺りのドラマティックな脚色も屈託なく楽しめる。
鑑賞以前、イタリアの大事件を扱う映像に英国プログレでは代名詞的存在のピンク・フロイドの挿入曲というのも如何なものかと思っていたが、これも他ならぬ取り越し苦労。全編を彩る"Shine On You Crazy Diamond"(エンドロールでは"Shine On Your Crazy Diamond"とクレジットされる)、モロ総裁の死刑が宣告されるシーンでスポット的に挿入される"The Great Gig In The Sky"(クレア・トリーのヴォーカルが炸裂するパート)と双方共に絶大な効果だった。78年と云う事件当時の年代を考慮すれば、77年リリースの"Animals"が最もタイムリーなアルバムだった訳だが、アニマルズのリリース後、「狂気」と「炎」という直近2大作品のカリスマ性が以前にも増して加速していた辺りを踏まえれば、ここでの起用も実に的を得ていたもの。中でも、"Shine On You Crazy Diamond"が序盤からの折々の場面でフィーチャーされる中、ギルモアのギターリフのパートをクライマックスでようやく登場させる演出などは心憎いばかりだった。
そもそもの話、NATOの存在も見え隠れする舞台裏を考慮すれば、フロイドの挿入曲も突拍子なものではなかった訳だが、何れにせよ、プロレタリアートの政権樹立を掲げる若者たちの表裏一体での純真さと狂気、そして葛藤を描くスクリプトではベストの選曲に思えてならない。それにしても、モロ総裁が街路を歩き回るイメージ的カットでは絶句させられた。事件を扱う初の映像作品「首相暗殺 (1986)」や真相に迫る各種書籍もご遺族の悲しみを増長させるばかりだったように思えるが、モロ総裁の魂も実は解放されていたと言わんばかりのあのイメージ的な演出は、ご遺族にとっても掛け替えのないものではなかっただろうか。ある種の真実も出尽くしていた03年、今更ながらのこのプロットには驚かされたが、これは時代性も問わぬ傑作に他ならない。大衆レベルでのイタリアの「良心」が沈黙を破ったのである。



製作スタッフ
Staff
関連作品 (抜粋)
Related Works "excerpts"
脚色と監督
Screenplay & Directed by
マルコ・ベロッキオ
Marco Bellocchio
ポケットの中の握り拳
 I pugni in tasca (1965) (also writer)
肉体の悪魔 Il diavolo in corpo (1986) (also writer)
サバス La visione del Sabba (1988) (also writer)
蝶の夢 Il sogno della farfalla (1994)
La balia (1999) (also story/screenplay)
L'Ora di religione (Il sorriso di mia madre) (2002) (also writer)
ブラックバード・フォース(未) Radio West (2003) (writer)
夜よ、こんにちは Buongiorno, notte (2003) (also screenplay)
マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶
 Marcello, una vita dolce (2006) (cast/himself)
製作
Produced by
マルコ・ベロッキオ
Marco Bellocchio
* 脚色と監督も兼任
セルジオ・ペローネ
Sergio Pelone
夜よ、こんにちは Buongiorno, notte (2003)
トゥー・アサシン 美しき暗殺者(未) Two Tigers (2007)
原作
Based on the novel "Il prigioniero" by
アナ・ラウラ・ブラゲッティ
Anna Laura Braghetti
夜よ、こんにちは Buongiorno, notte (2003)
パオラ・タヴェーラ
Paola Tavella
撮影
Cinematography by
パスクァーレ・マリ
Pasquale Mari
ラスト・ハーレム Harem suaré (1999)
ギャング・オブ・シチリア 沈黙の掟(未)
 Placido Rizzotto (2000)
夜よ、こんにちは Buongiorno, notte (2003)
狼たちの鎮魂歌 Gli Indesiderabili (2003)
編集
Edited by
フランチェスカ・カルヴェリ
Francesca Calvelli
蝶の夢 Il sogno della farfalla (1994)
ノー・マンズ・ランド No Man's Land (2001)
MY FATHER マイ・ファーザー My Father, Rua Alguem 5555 (2003)
夜よ、こんにちは Buongiorno, notte (2003)
美しき運命の傷痕 L'Enfer (2005)
美術
Production Design by
マルコ・デンティーチ
Marco Dentici
レッドオメガ追撃作戦 Poliziotto superpiù (1980)
夜よ、こんにちは Buongiorno, notte (2003)
映画のようには愛せない(未) La vita che vorrei (2004)
衣装デザイン
Costume Design by
セルジオ・バッロ
Sergio Ballo
帽子を脱いだナポレオン(未)
 The Emperor's New Clothes (2001)
夜よ、こんにちは Buongiorno, notte (2003)
音楽
Music by
リカルド・ジャーニ
Riccardo Giagni
MY FATHER マイ・ファーザー My Father, Rua Alguem 5555 (2003)
夜よ、こんにちは Buongiorno, notte (2003)
挿入曲
Various Music
"Marcia trionfale" (from "Aida")
Composed by Giuseppe Verdi
Performed by Orchestra e Coro del Teatro dell'Opera di Roma
Conducted by Georg Solti

"I Coraggiosi Cosacchi del Don" (Trad.)
Performed by Orchestra e Coro dell'Armata Rossa

"Svete Tikhiy (O Gladsome Light)"
Written by Aleksandr Knaifel (as Alexander Knaifel)
Performed by Tatiana Melentieva, soprano and Andrei Siegle, sampler

"Shine On You Crazy Diamond (Part One)"
Written by Richard Wright, Roger Waters and David Gilmour
Performed by Pink Floyd

"Gloria" (from "Misa Criolla")
Written by Ariel Ramírez, Jesus Gabriel Segade, Osvaldo Catena and Alejandro Mayol
Performed by Mercedes Sosa
Conducted by Ricardo Hagman

"Tango"
Written by Gianni Boncompagni (as Boncompagni), Paolo Ormi (as Ormi) and Claudio Boncompagni (as Boncompagni) and Mario Landi (as Landi)
Performed by Raffaella Carrà

"The Great Gig In The Sky"
Written by Richard Wright
Performed by Pink Floyd

"La Huida (Vidala Tucumana)"
(from "Navidad Nuestra")
Written by Ariel Ramírez and Félix Luna
Performed by Mercedes Sosa
Conducted by Ricardo Hagman

"Momento Musicale in Fa Minore, Op 94 No.3"
From "Moments Musicaux per pianoforte D780"
Written by Franz Schubert
Performed by Orchestra d'archi S. Gabriele della Radio Vaticana
Conducted by Alberico Vitalini
キャスト
Cast
配役
Plays
関連作品 (抜粋)
Related Works "excerpts"
マヤ・サンサ
Maya Sansa
Chiara La balia (1999)
輝ける青春 La meglio gioventù (2003)
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エシュロン 対NSA網侵入作戦(未) The Listening (2006)
ルイジ・ロ・カーショ
Luigi Lo Cascio
Mariano ペッピーノの百歩 I cento passi (2000)
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輝ける青春 La meglio gioventù (2003)
夜よ、こんにちは Buongiorno, notte (2003)
JIGSAW ジグソー(未) Occhi di cristallo (2004)
映画のようには愛せない(未) La vita che vorrei (2004)
氷の挑発2(未) Mare nero (2006)
ロベルト・ヘルリッカ
Roberto Herlitzka
Aldo Moro パルムの僧院 La certosa di Parma (1981) (tv)
流されて2 Notte d'estate con profilo greco, occhi a mandorla e odore di basilico
(1986)
黒い瞳 Oci ciornie (1987)
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夜よ、こんにちは Buongiorno, notte (2003)
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 De Reditu (Il ritorno) (2004)
パオロ・グリグリャ
Paolo Briguglia
Enzo ペッピーノの百歩 I cento passi (2000)
炎の戦線 エル・アラメイン El Alamein (2002)
夜よ、こんにちは Buongiorno, notte (2003)
ピエール・ジョルジョ・ベロッキオ
Pier Giorgio Bellocchio
Ernesto * ベロッキオ監督の子息
La balia (1999) (also producer)
ブラックバード・フォース(未)
 Radio West (2003) (also producer)
夜よ、こんにちは Buongiorno, notte (2003)
メリッサ・P 青い蕾(未) Melissa P. (2005)
ジョヴァンニ・カルカーニョ
Giovanni Calcagno
Primo 夜よ、こんにちは Buongiorno, notte (2003)
ROME ローマ Rome (2 episodes, 2005) (tv)
ジュリオ・ボゼッティ
Giulio Bosetti
(as Giulio Stefano Bosetti)
Paolo VI * クレジットは「ジュリオ・ステファノ・ボゼッティ」
皇帝のビーナス Venere imperiale (1963)
シーザーの黄金 Oro per i Cesari (1963)
明日に生きる I Compagni (1963)
必殺の歓び Requiem per un agente segreto (1966)
夜よ、こんにちは Buongiorno, notte (2003)
ジャンニ・スキッキ
Gianni Schicchi
(as Gianni Schicchi Gabrieli)
(undefined) * クレジットは「ジャンニ・スキッキ・ガブリエリ」
ポケットの中の握り拳 I pugni in tasca (1965)
L'Ora di religione (Il sorriso di mia madre) (2002)
夜よ、こんにちは Buongiorno, notte (2003)
カルロ・カステッリ
Carlo Castelli
(undefined) 夜よ、こんにちは Buongiorno, notte (2003)
ブルーノ・カリエーロ
Bruno Cariello
Segretario del Papa L'Ora di religione (Il sorriso di mia madre) (2002)
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アルベルト・クラッコ
Alberto Cracco
Medium フェノミナ Phenomena (1985)
ラ・マスケラ La maschera (1988)
マルセリーノ・パーネ ヴィーノ Marcellino (1991)
夜よ、こんにちは Buongiorno, notte (2003)
エマヌエラ・バリロッツィ
Emanuela Barilozzi
Annalisa V-マックス(未) Velocità massima (2002)
夜よ、こんにちは Buongiorno, notte (2003)
ロベルタ・スパヌオロ
Roberta Spagnuolo
Sandra 夜よ、こんにちは Buongiorno, notte (2003)
ジョヴァンニ・カペッリ
Giovanni Cappelli
Un impiegato L'Ora di religione (Il sorriso di mia madre) (2002)
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アントニオ・デ・マッテオ
Antonio De Matteo
Fratello Chiara 夜よ、こんにちは Buongiorno, notte (2003)
オーシャンズ12 Ocean's Twelve (2004)
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