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White Nights
ホワイトナイツ 白夜 (1985) USA 137min.
Introduction 序盤アウトライン
ソ連。シベリアの対空防衛基地に一機の英国旅客機が緊急着陸する。4名の死者を含む多数の死傷者の中には、ツアー最終地の日本を目指していたロシア人のダンサー、ニコライの姿もあった。8年前、米国に亡命したニコライは、被告人不在のまま15年の懲役刑を言い渡されていた犯罪人として身柄を確保されるが、人道的見地から西側の窮地を救ったソ連に対する好意的世論が高まる中、ニコライの容態を重体と偽るソ連の対応にも米国当局は成す術がない状態だった。やがて、罪を帳消しにするには母国でのキャリア再開と云う交換条件をKGBの大佐チャイコから提示されたニコライだったが、そんな彼の当面の滞在先として通された場所は、ベトナムでの対外政策に不信を募らせソ連に亡命したと云う米国人のタップダンサー、レイモンドとロシア人の妻ダーリャの家だったーー
Various Note メモ
米国に亡命した著名なロシア人ダンサー・ニコライ(ミハイル・バリシニコフ)が、搭乗する旅客機の突発的なアクシデントによって願わざる形で帰国、間もなくして囚われの身となる中、ソ連に亡命していた米国人タップダンサーのレイモンド(グレゴリー・ハインズ)とその妻ターリャと共に、彼らを使い捨ての政治の道具と考える冷酷なKGB大佐チャイコの下から決死の脱出を試みると云う物語だが、フランス人の振付師ローラン・プティが創作したモダンバレエ「若者と死」で幕を開ける冒頭シークエンスからクライマックスまで、その芸術性と緊張感の昇華する切れのある映像は約140分と云う上映時間にも瞬く間と云った印象。映像作家としても知られるイエジー・スコリモフスキーも傑出したパフォーマンスを披露。
組織的に才能を発掘し政治利用出来る限り重用すると云う体質の下、芸術家の自殺率も世界一だったと云う当時のロシア(ソ連)ではエゴイズムやナルシズムの象徴とされていたモダンバレエは禁じられていた訳だが、実は、バリシニコフが亡命をしてまで踊りたかったと云う作品こそが、冒頭で披露されるプティの「若者と死」だったと云う。バリシニコフのバイオグラフィー的な作品と考える方々も少なくなかったと云う本作だが、バリシニコフにとっては縁も深いその「若者と死」で幕を開ける冒頭シークエンスだけでも永久保存版の価値があると云えるもので、通常のミュージカルやドキュメントで見受けられる画一的なショットは回避し、全身像を捉えながらカメラを移動、躍動感を表現する為に意図的なカットも挿入された映像は、現実に臨場感にも満ち溢れた素晴らしいものである。
そのバレエシークエンスでのカメラワークと編集スキルは、グレゴリー・ハインズのソロによるタップダンスやハインズとバリシニコフのデュオによるシークエンスでも活かされているが、その映画史にも残る傑出したダンスシークエンスを演じた2人の競演も、実は、当初から予定されていたものではなく、グレゴリー・ハインズのダンスやバリシニコフの舞台に日頃から魅せられていたと云う監督のハックフォードがダンス映画を撮りたいとの意向を伝えたオライオンの重役から2人の競演を勧められた事から始まったものだった。
ハックフォードのインタヴューによれば、政治絡みのサスペンスと云ったプロットは、ダンスのシークエンスによってシナリオの流れが中断してはならないと云う彼の信念を伝えられた脚本家ゴールドマンによって練り上げられたアイディアで、劇中で披露される一連のダンスシークエンスも、異なる2つの国の2人のダンサーが共に亡命者と云う背景がセッティングされた事でハックフォードの提唱するシナリオには不可欠なシークエンスとして活かされていた訳である。また「セパレート・ライヴス」と「セイ・ユー・セイーミー」と云う全米ポップチャート1位を記録した2曲を含むオムニバス形式のサントラも大ヒットした本作だが、その楽曲の殆どがダンスシークエンスのBGMとして使用されていたと云う事を差し引いても、この冷戦時代末期のロシアを舞台に繰り広げられるサスペンスフルなシナリオにして米国産のポップナンバーを違和感なく融合させていたその手腕には、今思えば感服せずにもいられない所。
亡命者を流出した家ではその家族を罰すると云う連邦政府の恐さを熟知していたバリシニコフは、74年の亡命後間もなくして収めたダンサーとしての成功や77年のオスカー候補にも挙がった「愛と喝采の日々」での役者として成功していた事から、恩赦と云う条件を提示する連邦政府から幾度となく帰国を促されていたが、逮捕されるのではないかと云う不安から一度も帰国を果していなかった。当初はレニングラードでの撮影を予定していたと云うハックフォードのプランも然るべく変更を余儀なくされた訳だが、劇中で披露されるネバ川やモイカ運河、巨大なレーニン像、キーロフ劇場の外観と云った映像は、現地レニングラードにコネがあるフィンランド人クルーによって撮影されたもので、屋内でのカットや他の一連のカットは、ロンドンに建造されたセットで撮影されたものだった。
ただ、夫婦を演じるグレゴリー・ハインズとイザベラ・ロッセリーニやバリシニコフの恋人役を演じるヘレン・ミレンは、ソ連の雰囲気を肌で感じさせようとするハックフォードに連れられる形で、実際にレニングラードの地を踏んでいるが、貧困と食糧不足を肌で感じたと云うロッセリーニが面白い逸話を残している。それは、ハインズと共に訪れたレニングラード市内では「高級」とされるレストランでフランス料理を注文した所、その全てが品切れで、最終的に出された料理はポテトのバリエーションだけだったと云う話。
アメリカンバレエシアターの芸術監督としてのスケジュールが偶然にも空いていた事で実現したと云うバリシニコフの出演だが、本作の翌々年にあたる87年の「ダンサー」や91年の「ロシアン・ルーレット」と数年置きでの劇場長編への出演を果たす事からもバリシニコフ自身が俳優業のキャリアに興味を示していた事は明らかで、本作はその大きなターニングポイントになっている。ただ、実は、本作への出演によって大きな転機を迎えていたのはバリシニコフだけではなく、ダンサーから俳優に移行しつつあったハインズにとっても大きな賭けだったもので、また、当時はトップモデルとして活躍していたロッセリーニにとっても、せいぜい30歳までと云ったモデル業に見切りを付けると云う意味では格好のオファーだった。撮影開始からの2週間は感情のコントロールに苦しんだと云うロッセリーニだが、最終的には感情のコントロールも完璧に会得したと云う彼女も、極めて友好的だったと云うハインズとバリシニコフの存在なくしてここでの仕事は成し遂げられなかったと述懐している。
バリシニコフ演じるニコライのかつての恋人役で重要なカードとして登場するヘレン・ミレンだが、彼女の父親がロシア人だったと云う事に監督のハックフォードが気付いたのも撮影が開始されてからだったらしい。ちなみに本作での仕事が縁でハックフォードとヘレン・ミレンはゴールイン、06年現在も仲睦まじい関係を維持。
撮影スタッフやキャストの誰しもが予測出来なかったと云う3年後の民主化を控えた時期にリリースされた本作は、ベトナムからの脱走兵として登場するハインズがその対外政策を痛烈に批判するスクリプトから愛国的ではないとする右翼派からの意見や、東西の緊張緩和に務めているにも拘らず常に悪者扱いされると云った左翼派の意見などから板挟みの目に遭っているが、監督のハックフォードによれば、捻出した費用は回収していたらしい。その渦中に居る関係者にすれば微妙なプロットだったと云う事は重々理解出来るが、鑑賞当時の印象を正直に言ってしまえば、冒頭でのバリシニコフとフロランス・フォーレによる「若者と死」はもとより、「ポーギーとベス」ではタップダンスのみならず美声も披露するグレゴリー・ハインズを目の当たりにした時点では失禁すら催していたもので、クライマックスまで雪崩れ込むサスペンスフルなモチーフにも露骨に感動させられた。
互いのスタイルを抑制しながらの共同作業で、その互いのスタイルに魅了されていたと云うグレゴリー・ハインズとミハイル・バリシニコフだが、エンタメの業界人とは一線を画していたミハイル・バリシニコフを捉まえて「マイク」と云う愛称で呼んでいたハインズには、関係者の誰しもが驚かされていたらしい。そんな話も03年に逝去したグレゴリー・ハインズの追悼作での逸話になってしまうとは言葉にもならない所。



製作スタッフ
Staff
関連作品 (抜粋)
Related Works "excerpts"
監督
Directed by
テイラー・ハックフォード
Taylor Hackford
愛と青春の旅だち An Officer and a Gentleman
カリブの熱い夜 Against All Odds
ブラッド・イン ブラッド・アウト Bound by Honor
黙秘 Dolores Claiborne
ディアボロス 悪魔の扉 The Devil's Advocate
Ray レイ Ray
製作
Produced by
テイラー・ハックフォード
Taylor Hackford
* 監督も兼任
ウィリアム・S・ギルモア
William S. Gilmore
摩天楼ブルース Defiance
失われた航海 S.O.S. Titanic (tv)
カリブの熱い夜 Against All Odds
原案
Story by
ジェームズ・ゴールドマン
James Goldman
* 脚本も兼任
ナンシー・ダウド
Nancy Dowd
(uncredited)
* ノークレジット
スラップ・ショット Slap Shot
帰郷 Coming Home
ストレート・タイム Straight Time
普通の人々 Ordinary People
脚本
Screenplay by
ジェームズ・ゴールドマン
James Goldman
冬のライオン The Lion in Winter
ニコライとアレクサンドラ Nicholas and Alexandra
ロビンとマリアン Robin and Marian
エリック・ヒューズ
Erick Hughes
レイズ・ザ・タイタニック Raise the Titanic
カリブの熱い夜 Against All Odds
撮影
Photographed by
デイヴィッド・ワトキン
David Watkin
HELP!四人はアイドル Help!
ロビンとマリアン Robin and Marian
炎のランナー Chariots of Fire
編集
Edited by
フレドリック・スタインカンプ
Fredric Steinkamp
トッツィー Tootsie
カリブの熱い夜 Against All Odds
愛と哀しみの果て Out of Africa
3人のゴースト Scrooged
ザ・ファーム 法律事務所 The Firm
ウィリアム・スタインカンプ
William Steinkamp
美術
Production Designed by
フィリップ・ハリソン
Philip Harrison
アウトランド Outland
ネバーセイ・ネバーアゲイン Never Say Never Again
ミシシッピー・バーニング Mississippi Burning
衣装デザイン
Costume Design
エヴァンジェリン・ハリソン
Evangeline Harrison
狙撃者 Get Carter
ジャガーノート Juggernaut
スーパーマン III 電子の要塞 Superman III
音楽
Music by
ミシェル・コロンビエ
Michel Colombier
リスボン特急 Un flic
相続人 L'héritier
潮騒 Le hasard et la violence
続フレンズ ポールとミシェル Paul and Michelle
カリブの熱い夜 Against All Odds
挿入曲
Various Music
Separate Lives (Love Theme From White Nights)
- Phil Collins & Marilyn Martin / composed by Stephen Bishop
Prove Me Wrong - David Pack
Far Post - Robert Plant
People On A String - Roberta Flack
This Is Your Day - Nile Rodgers
Snake Charmer - John Haitt
The Other Side Of The World - Chaka Khan
My Love Is Chemical - Lou Reed
Tap Dance - David Foster
People Have Got To Move - Jenny Burton
Say You, Say Me - Lionel Richie

Johann Sebastian Bach from "Passacaglia in C Minor - BMV582"
Jean Cocteau
- ballet 'Le Jeune Homme et la Mort' based on a theme by
George Gershwin - from opera "Porgy and Bess: There's a Boat Dat's Leavin' Soon For New York"
Vladimir Vysotsky - song "The Horses"
キャスト
Cast
配役
Plays
関連作品 (抜粋)
Related Works "excerpts"
ミハイル・バリシニコフ
Mikhail Baryshnikov
'Kolya'
Nikolai Rodchenko
愛と喝采の日々 The Turning Point
ザッツ・ダンシング! That's Dancing!
ダンサー Dancers
ロシアン・ルーレット Company Business
SEX and the CITY
 セックス・アンド・ザ・シティ Sex and the City (tv)
グレゴリー・ハインズ
Gregory Hines
Raymond Greenwood ウルフェン Wolfen
コットンクラブ The Cotton Club
サイゴン Off Limits
タップ Tap
レイジ・イン・ハーレム A Rage in Harlem
彼女を見ればわかること
 Things You Can Tell Just by Looking at Her
イエジー・スコリモフスキー
Jerzy Skolimowski
Colonel Chaiko 夜の終りに Niewinni czarodzieje (written by)
水の中のナイフ Nóz w wodzie (written by)
出発 Le Départ (written & directed by)
早春 Deep End (written & directed by)
マーズ・アタック! Mars Attacks!
ヘレン・ミレン
Helen Mirren
Galina Ivanova * ハックフォード監督夫人
オー!ラッキーマン O Lucky Man!
失われた航海 S.O.S. Titanic (tv)
カリギュラ Caligola
2010年 2010
第一容疑者 Prime Suspect (tv)
ジェラルディン・ペイジ
Geraldine Page
Anne Wyatt 肉体のすきま風 Summer and Smoke
渇いた太陽 Sweet Bird of Youth
インテリア Interiors
バウンティフルへの旅 The Trip to Bountiful
イザベラ・ロッセリーニ
Isabella Rossellini
Darya Greenwood ブルーベルベット Blue Velvet
シエスタ Siesta
黒い瞳 Oci ciornie
ワイルド・アット・ハート Wild at Heart
ワイアット・アープ Wyatt Earp
ジョン・グローヴァー
John Glover
Wynn Scott アニー・ホール Annie Hall
縮みゆく女 The Incredible Shrinking Woman
3人のゴースト Scrooged
ステファン・グリフ
Stefan Gryff
Captain Kirigin 裸足のイサドラ Isadora
ジュリア Julia
レッズ Reds
ウィリアム・フートゥキンス
William Hootkins
Chuck Malarek 合衆国最後の日 Twilight's Last Gleaming
スター・ウォーズ Star Wars
フラッシュ・ゴードン Flash Gordon
シェーン・リマー
Shane Rimmer
Ambassador
Larry Smith
レッズ Reds
ガンジー Gandhi
ハンガー The Hunger
フロランス・フォーレ
Florence Faure
Ballerina (Death)  
デイヴィッド・サヴィーレ
David Savile
Pilot 火星人地球大襲撃(未) Quatermass and the Pit
地獄の艦隊 Hell Boats
マロニエの別れ道 The Walking Stick
イアン・リストン
Ian Liston
Co-pilot 兵士トーマス Overlord
遠すぎた橋 A Bridge Too Far
ベニー・ヤング
Benny Young
Flight Engineer 炎のランナー Chariots of Fire
愛と哀しみの果て Out of Africa
ヒラリー・ドレイク
Hilary Drake
Stewardess #1 Success Is the Best Revenge
Ashenden (tv)
ダニエル・ベンザーリ
Daniel Benzali
Dr. Asher 007 美しき獲物たち A View to a Kill
マリリンとアインシュタイン Insignificance
メッセンジャー・オブ・デス Messenger of Death
ガリーナ・ポメランツェヴァ
Galina Pomerantzeva
Dvornik  
セルゲイ・ルーサコフ
Sergei Rousakov
KGB #1 スパイ・ライク・アス Spies Like Us
ヘレン・デンビー
Helene Denbey
Bess  
マリアム・ダボ
Maryam d'Abo
French Girlfriend * 序盤のワンシーンにのみ登場
ゲームの達人 Master of the Game (tv)
007 リビング・デイライツ The Living Daylights
女神がそっと微笑んで Money
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