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Das wunder von Bern
ベルンの奇蹟 (2003) Germany 113min. a.k.a. "The Miracle of Bern"
Introduction 序盤アウトライン
1954年春、西ドイツ、ルール地方。国内でも屈指の重工業地帯と知られるこの土地に労働者相手のパブを構えるルバンスキー家は、欧州大戦への出兵から消息を絶っていた父親リヒャルトの代わりに母親のクリスタが3人の子供と暮らす生計を支えていた。そんなルバンスキー家の次男坊マティアスは、地元のサッカーチームで活躍するヘルムート・ラーンの鞄持ちとしてホームの試合に同行、その試合結果に一喜一憂するサッカーを生甲斐にする少年だった。そんなある頃、父親のリヒャルトが収容先のソ連から突如帰還、戦後の価値観に健気に順応していたルバンスキー家の面々は、心に深い傷を負うリヒャルトの言動に困惑を余儀なくされる。折しもスイスで開催されるW杯の代表メンバーに選ばれたラーンの応援に躍起になるマティアスだったが、そんな息子の姿にジェラシーを覚えたリヒャルトは、新たな価値観に順応出来ずに鬱積させていたストレスをマティアスにぶつけてしまうーー
Various Note メモ
ドイツ国民が認識する20世紀中に於ける「奇蹟」とは、あの「ベルリンの壁の崩壊」と本作のモチーフ「ベルンの奇蹟」だと云う。1954年、スイスで行われた第5回FIFAワールドカップ。首都ベルンを舞台にドイツのナショナルチームが奇蹟の優勝を遂げる中、欧州大戦によって引き裂かれていた一つの家族がその絆を取り戻すまでの過程を情緒豊かに綴る物語。数多くの「父親」が戦地からの帰還を果せぬ中、女性が苦労を強いられた父親不在の家庭のペーソスを描いたと語る製作者のトム・シュピースだが、その悲壮感も皆無の映像は、希望と躍動感に満ち溢れたもの。作品のポジティヴな方向性を露にするスコアも極めて秀逸で、きらめくばかりに眩い色調の映像にも目を奪われる。
2部リーグの2つのチーム("SpVgg Erkenschwick"と"Westfalia Herne")での選手としてのキャリアを持つ監督のヴォルトマンは、その競技経験の活かされた演出スキルによってクライマックスとなるベルンでの決勝戦でも未曾有の緊張感を再現しているが、何より特筆すべきは、少年らによる草サッカーのシークエンスやパブのテレビで試合に見入る聴衆の表情、監督会見の模様などに置き換える形で紆余曲折での決勝までの道程を描く演出。シナリオのテーマは、「奇蹟」とまで称される壮大な実話を再現するモチーフと家族の絆を描くモチーフと云う2つのテーマを融合しようとするもの。さり気なく纏められたようにも映る映像だが、そのポテンシャルは相当のものだったと云える。例えば、ミュンヘンで金メダルを獲得した日本男子バレーを描くドキュメントとその本筋とは全く別のフィクションとして描かれる家族の絆を融合させたようなドラマが、全世界配給のナチュラルな劇場長編として陽の目を見る事など想像出来るだろうか。巷では平均点に甘んじる本作の評価だが、甘んじて参考になどはしたくない所。
ハンガリーを相手に3-8と云う歴史的大敗を喫した予選でのゲームや、3-2での勝利によってWCの優勝と云う歴史的偉業を成し遂げた決勝戦、ユーゴ対ブラジルのゲームなどの54年当時のフッテージが収録されたDVDの特典映像だが、これらを見れば明らかな通り、劇中での殆どのゲームシークエンスは、現実のゲームを忠実に再現したもの。恐らくは、ドイツ人のサッカーファンであれば、この歴史的フッテージを忠実に再現する映像には、誰もが驚愕したはず。しかも、ヴォルトマンの拘りによって起用されたキャストは、サッカーが巧いと云う事と当時の優勝チームのメンバーに似ている容姿の人物ばかり。ドイツ2006を控えていた時期での公開だった本作だが、協会とクリンスマンの亀裂や若手中心の代表チームにも不満が噴出していた事を想像すれば、この作品の公開も何気に意義深いものだったのではないだろうか。予想外の快進撃となったホスト国ドイツが堂々の3位入賞を果たした事は周知の所。ちなみに、54年当時、優勝を決めたラーンのゴールを何度も真似たと云うベッケンバウアーは、6歳だった当時を振り返りながら本作を手放しで絶賛している。
ドイツチームの紆余曲折での快進撃が綴られる中、パラレルに描かれる主人公の少年マティアスと父親リヒャルトのモチーフだが(演じる2人はモノホンの親子。顔もソックリ。)、この親子の絆を中心に描かれるルバンスキー一家のモチーフを除けば、他のモチーフはその殆どが実話に基づくものらしい。ハンガリーに3-8で大敗を喫した予選ゲームの後に寄せられたファンからの非難の手紙(決勝前に監督自身が読み上げる)や、大敗を喫した後にショックを受けた3人の選手がキャンプの宿泊先からエスケープして酒場でビールを浴びるエピソード、そして、各試合結果のスコアなどそれら全てが実話だったと云う事だが、取り分け中でも驚かされたのが、監督のアドヴァーザーとしてチームに同行していた「アディ」と云う人物のエピソード。ピッチコンディションに合わせたスパイクを提供するアディと云う人物は、その「ダスラー」と云う苗字も劇中では明らかにしているが、斯く云うこの人物こそは、あの「アディダス」の創始者その人。当時、最強チームと謳われていたハンガリー(4年以上無敗だった)が圧倒的優位とされる中、雨が奇蹟をもたらしたとも云えるドイツの優勝だが、これもアディ・ダスラー氏の多大な貢献によるものだったと云える所。
製作当時、ドイツチームを率いていた代表監督ルディ・フェラー(90年のイタリアW杯で活躍した名選手)を招いてさまざまな討議を交わしたと云う監督のヴォルトマンだが、その話題の中心にも挙がっていたと云うヘルムート・ラーン氏(54年大会で決勝ゴールを挙げた人物。劇中でも中心キャラとして登場)は、ヴォルトマンから招待を受けていたと云うプレミア試写会の当日に逝去している。その訃報もプレミアの当日に聞かされたと云うヴォルトマンを始めとする関係者一同だが、その複雑な胸中がどれ程までのものだったかなど容易には想像も出来ない所。
860万ユーロ(約13億円)にも上ったと云う製作費用は、ドイツ映画史上でも最高額と云われるもの。その膨大な数のスタッフの統制にも苦労したと云う監督のヴォルトマンは、どの場面にも分け隔てなく思い入れがあると語っているが、敢えて挙げるならば、マティアスの父親リヒャルトが見事なリフティングとバナナシュートを披露するシーンがお気に入りらしい。国内版宣材のデザインとなっている親子でサッカーに戯れるシーンなどは、その実、劇中には登場しないが、この童心に返ったリヒャルトのカットは、サッカーを取り巻く底辺の広さとその影響力を無言で物語っている。戦後の復興もままならぬドイツを舞台にしながら、ここまでポジティヴな映像というのも記憶にない所だが、厭らしさも皆無のこの情景にはサッカーファンのみならず誰もが驚かされるはず。
余談を一つ。54年当時、最強と謳われたハンガリーを撃破する事で「奇蹟」を成し遂げたとされるドイツチームだが、実は、その42年後の96年アトランタでブラジルを撃破した日本サッカー・オリンピックチームも何気に興味深い結果を残している。A代表にも匹敵する最強の布陣だったブラジルの攻撃を封印した日本チーム(森園さんが主将だったチーム)は、確かに「マイアミの奇蹟」と呼ばれるにも相応しい結果をもたらしたと云えるが、今、思い出せば、ブラジル戦で金星を上げた後、ナイジェリアに敗退した日本が、得失点差での結果も問われる厳しい状況下で迎えた予選第3戦の相手がハンガリーだった。結果的には1勝1敗1分で並んだ3チーム(ブラジル、ナイジェリア、日本)の得失点差で予選敗退した日本チームだが、あのハンガリーとの一戦は、54年当時のドイツvsハンガリー戦に酷似していたように思える。ハンガリーを相手にした54年当時のドイツと同様、前半にして0-2と云うビハインドを背負っていた日本は、1点を返した後に、後半ロスタイム間際での同点弾とロスタイムでの逆転弾で劇的な逆転勝利を収める訳だが、W杯とオリンピック(しかも予選と決勝)と云うその舞台に大きな違いはあれど、この試合だけに限って云えば、正にその光景は54年当時のドイツチームのフラッシュバックそのもの。耐え抜いて勝ちを拾ったブラジル戦も然る事ながら、残り僅かな時間で勝ちをもぎ取ったあのハンガリーとの一戦こそが、正に「マイアミの奇蹟」と呼ぶにも相応しかったのではないだろうか。



製作スタッフ
Staff
関連作品 (抜粋)
Related Works "excerpts"
監督
Directed by
ゼーンケ・ヴォルトマン
Sönke Wortmann
ハリウッド・ゲーム(未) The Hollywood Sign
製作
Produced by
トム・シュピース
Tom Spiess
ショコラーデ Meschugge
GIGANTIC ギガンティック Absolute Giganten
ゼーンケ・ヴォルトマン
Sönke Wortmann
* 脚本と監督も兼任
ハンノ・ヒュース
Hanno Huth
スターリングラード Stalingrad
乙女の祈り Heavenly Creatures
シャーロット・グレイ Charlotte Gray
脚本
Written by
ゼーンケ・ヴォルトマン
Sönke Wortmann
* 製作と監督も兼任
ロッフス・ハーン
Rochus Hahn
Götterdämmerung - Morgen stirbt Berlin (1999) (tv)
Es geht nicht immer nur um Sex (2000) (tv)
撮影
Cinematography by
トム・フェーアマン
Tom Fährmann
オスカー・ワイルドのカンタベリー城と秘密の扉
 Das Gespenst von Canterville (tv)
編集
Edited by
ウアリ・クリステン
Ueli Christen
ショコラーデ Meschugge
アナトミー Anatomie
美術
Production Design by
ウリ・ハニシュ
Uli Hanisch
ドイツチェーンソー大量虐殺
 Das Deutsche Kettensägen Massaker
ヘヴン Heaven
マンフレッド・ローマー
Manfred Lohmar
Entführung aus der Lindenstraße (1995) (tv)
衣装
Costume Design by
ウルシュラ・ヴェルター
Ursula Welter
アフター・ミッドナイト 若者たちの群像(未)
 Nach Mitternacht
アンツ・イン・ザ・パンツ!(未) Harte Jungs
音楽
Music by
マルセル・バルゾッティ
Marcel Barsotti
Liebe im Schatten des Drachen (1998)
Grüne Wüste (1999)
The Poet (2003)
キャスト
Cast
配役
Plays
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サージェント・ペッパー ぼくの友だち Sergeant Pepper
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Johanna Gastdorf
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 Sophie Scholl - Die letzten Tage
ミルコ・ラング
Mirko Lang
Bruno Lubanski WE LOVE BALLS !!(未) Männer wie wir
SWORD-X ソード-X 
ビルテ・ヴォルター
Birthe Wolter
Ingrid Lubanski フラッシュバック(未) Flashback - Mörderische Ferien
フィアー・ドット・コム FeardotCom
カタリーナ・
ヴァッカーナーゲル
Katharina Wackernagel
Annette Ackermann Leonora's Song (1998)
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