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Dracula
ドラキュラ (1979) USA / UK 109min.
Introduction 序盤アウトライン
英国ヨークシャー州。大嵐の夜、ドクター・シワードが営む療養所から程近い海岸沖にトランシルヴァニアから渡来した機帆船が難破する。船長以下のクルー全員が無残な遺体で残される中、渡航依頼者のドラキュラ伯爵が唯一の生存者として救助されるが、やがて、伯爵が当地での不動産購買手続きを進める中、シワードの友人ヴァン・ヘルシング卿の娘で療養所に滞在していたミーナが謎の突然死を遂げるーー
Various Note メモ
70年代後半に大ヒットを記録したブロードウェイ版を映像化。言わずと知れたブラム・ストーカー(Bram Stoker)の大ヒット小説が大元の素材だが、ここでの下敷きは、舞台作家のハミルトン・ディーン(Hamilton Deane)と「ゼンダ城の虜 (1937)」「ガス燈 (1944)」のジョン・L.ボルダーストン(John L. Balderston)による舞台戯曲。脚色は「ニッケルオデオン (1976)」「SF ボディ・スナッチャー (1978)」「ブルベイカー (1980)」のW.D.リクター(W.D. Richter)。監督は「サタデー・ナイト・フィーバー (1977)」「ブルーサンダー (1983)」「ウォー・ゲーム (1983)」「ショート・サーキット (1986)」のジョン・バダム(John Badham)。淡いコントラストにも終始する静謐な映像、あのジョン・ウィリアムズ(John Williams)によるスリリングなスコア、名優と曲者が火花を散らすキャスティングなど駒も揃い踏みの1本だが、蓋を開ければ、従来のホラーファンと一般の映画ファンの間では意見を分ける事に。
出演は「わが愛は消え去りて (1970)」「パリは霧にぬれて (1971)」「サンタマリア特命隊 (1972)」「デーヴ (1993)」「フロスト×ニクソン (2008)」のフランク・ランジェラ(Frank Langella)、「嵐ケ丘 (1939)」「レベッカ (1940)」「ヘンリィ五世 (1945)」「ハムレット (1948)」「三文オペラ (1952)」「リチャード三世 (1955)」「王子と踊子 (1957)」のローレンス・オリヴィエ(Laurence Olivier)、「大脱走 (1963)」「ミクロの決死圏 (1966)」「007は二度死ぬ (1967)」「鷲は舞いおりた (1976)」「ハロウィン (1978)」のドナルド・プレザンス(Donald Pleasence)、「針の眼 (1981)」「天使の失踪 (1983)」「哀愁のエレーニ (1985)」「ウディ・アレンの影と霧 (1992)」「ウルフ (1994)」のケイト・ネリガン(Kate Nelligan)、「スキャンダル (1989)」「父の祈りを (1993)」「トロイ (2004)」のトレヴァー・イヴ(Trevor Eve)、「チャンピオンズ (1984)」のジャン・フランシス(Jan Francis)、「若いけものたち (1971)」「ホロコースト 戦争と家族 (1978)(TV)」「ブライド (1985)」「ロンドン・キルズ・ミー (1991)」のトニー・ヘイガース(Tony Haygarth)など。

以下、完全ネタバレ。未鑑賞の方はご留意下さい。
トランシルヴァニアから渡英する伯爵をヴァン・ヘルシングらが迎え撃つアウトラインは、原作以下、種々の脚色などでもお馴染みのような印象だが、実はここでの内容も全てが別モノ。と云うより、勧善懲悪の大ロマンをハッピーエンドで締め括る原作以下の作品群とは基本路線がまるで違う。結論に遡れば、強烈な紫外線を浴びた伯爵が巨大コウモリのようなマント姿で飛び去る中、ヒロインのルーシー(ケイト・ネリガン)が伯爵の復活を予見するかのようにほくそ笑むエンディングだが、これは、ほぼ同時期にリリースされた「ドラキュラ都へ行く (1979)」にもタメを張るようなノリ。ヘルシングをも葬り去る中、やや奔放なヒロインとストーカーもどきの伯爵の逃避行にエールを送るような内容は、一連の作品とも一線を画する正しくアンチ原作路線。
登場キャラのファーストネームなども原作に準じる中、さまざまな描写でも原作を踏襲するここでの脚色だが、ここまでコンパクトに纏め上げられる内容は原作のファンとしてはかなり微妙。まず、ゴダルミング卿(ルーシーの婚約者)やキンシー・モリス(ルーシーに想いを寄せる精神病院長)が割愛されるキャラ設定だが、ここではミーナ(原作ではヒロイン)とルーシー(原作では最初の犠牲者)の設定が全く逆。と云うか、これは名前だけを入れ替えたようなものでもなく、キャラ色はそのままで立場を入れ替えたようなシチュエーション。と云うか、これも奔放なヒロインと伯爵のロマンスを描く上ではある種の必然だった訳だが、それにしても、ここでのコンパクトなキャラ設定は物凄い。ミーナ(ここでは犠牲者)+ヘルシングの父娘、シワード(通常は「セワード」だが、ここでは発音も字幕もシワード)+ルーシー+婚約者のジョナサン、そして伯爵+レンフィールドという3つの人脈に絞られる人物相関はかなり分かり易い。と云うより、孤高のヒーローたるヘルシングに娘のリベンジをさせる中、最終的にはヒロインをモノにする伯爵が勝ち名乗りを上げるような内容はかなり微妙。
ただ、吸血鬼と化した愛娘を目の当たりにするヘルシングのペーソスなどは超ヘヴィー。これは、婚約者との決別などを描く他の脚色などとは比較にもならぬほどツライ。ましてやここでの場合、愛娘を木の杭で串刺しにするばかりか、さらには首を切り取ってもダメな状況。最終的には、愛娘の心臓を抉り取るヘルシングだが、この辺りのペーソスは一連の映像化作品でも他の追従を許さない。と云うか、個人的な感覚ではこんなの絶対あり得ないが、ちなみに、木の杭で撃退された女吸血鬼が、なおも鏡にも映らぬヴァンパイアの状態で描かれる脚色と云うのもかなり珍しい。
珍しいと云えば、ここでは伯爵がデイ・ウォーカーとして描かれていたりもするが、強烈な太陽光線を浴びてリタイアするエンディングを目の当たりにすれば、この辺りもかなり微妙。中盤、馬上の伯爵が夕日の残る墓場に登場するシーンには大方のファンが衝撃を受けたはずだが、これも要は、伯爵が徘徊できる時間帯も限定的なものではないと云う事で、強烈な紫外線を浴びない限り大丈夫と云う曖昧な設定だったと云う事。と云うか、巨大コウモリのように飛び去るクライマックスを参照にすれば、強力な紫外線を受けてもダメージは受けるものの実は平気だったと云う事にもなるが、となれば、断末魔のヘルシング+ジョナサンのフック吊るし上げ攻撃によるあのダイナミックなクライマックスも台無しに。単なる見せ場止まりだったと云う事にもなってしまうが、何れにせよ、スカボロ沖の船上で迎えるファイナルについては、絵的にカッコ良かった事だけは確かな所。
絵的と云えば、モーリス・ビンダー(Maurice Binder)監修のエフェクト映像は、ここでの大きな見せ場の一つ。伯爵とヒロインの結合を描くシークエンスは約1分20秒にも及ぶものだが、個人的にはこれもやや微妙。ボンド映画ならまだしも、これはヴィヴィッドなメイクもフィーチャーする吸血鬼映画なので。と云うか、女吸血鬼と化したミーナやハーフヴァンパイア状態のルーシーはキバ付きでのヴィヴィッドなメイクが施される中、メインヒールの伯爵にはキバもそれらしきメイクもなかったりするが、これではあまりにアンバランス。と云うより、フェミニズムのかけらもない。まぁ、イケメン役者だった当時のフランク・ランジェラのファンには受けたのかもしれないが。と云うか、ここでのランジェラは昨今とはまるで別人。今では短髪のおやじルックスも定番のフランク・ランジェラだが、何が衝撃だったと云えば、80年代を通り越しての90年代初頭、久しぶりに見たランジェラのルックスがいきなり別人だった辺り。まぁ、同じくバダム監督のSNFじゃあるまいし、あの手のパーマ頭では仕事もなくなる訳だけど。何れにせよ、ここでのランジェラはマジでイケメン。奔放なヒロインとの逃避行を描く脚色にはすんなりフィットしていたような気も。
脚色と云えば、ここでの原作を踏襲するモチーフは次の通り。原作での序盤、傷口を舐めるジョナサンに大興奮する伯爵の描写は、シワード邸で指を切る召使に置き換えられる設定。トランシルヴァニアでの乳飲み子が犠牲になる描写は、女吸血鬼と化したミーナを加害者とする設定だが、ちなみにここでは3人の女吸血鬼は登場せず。城壁を徘徊する伯爵の描写については、ここではドラキュラ城ではなくシワード邸の外壁でお目見え。自らの手でガラスを外して部屋に侵入するここでの描写は一連の脚色版でもレア。ヒロインに輸血を試みるシーンについては、膨大なページ数が割かれる原作でもおなじみだが、ここでは何と「血液型」にも言及。これは血液型の分類法も発見されていなかった原作リリース当時にはなかった描写。その辺りについては、クライマックスでのカーチェイスなどを見る限り、20世紀を思わせる車のタイプなどから時代考証にも矛盾はない。
原作ではヒロインのお相手として大ハッピーエンドを迎えるジョナサンも、ここでは蚊帳の外キャラ。クライマックスでは伯爵退治に貢献するものの、ルーシーが伯爵の手に落ちる大事な局面でもその姿はシナリオから完全に消え去る。そんなジョナサンを引き合いに出せば、原作のイメージにも肉薄していたレンフィールドだが、ここでは伯爵との関係も英国で始まり英国でピリオド。ここでの獲物もハエではなくゴキブリだったりするが、殺害される理由は全く異なるものの、首をへし折られるここでの末路は、背骨を折られる原作にも近いイメージ。そんなレンフィールドの首をへし折る際、霧に変化する伯爵だが、狼やコウモリに変化する特撮映像を大々的にフィーチャーする映像は、ここまでの脚色版の中でもピカイチの迫力。これは動物への変身説を謳う原作を否定する所から始まるハマー版にもなかった魅力。終盤、間に合わせの十字架で反撃するジョナサンが一蹴される場面なども、原作とは一線を画する描写。ちなみにこの辺りの日和見主義的な信仰心を駆逐される描写は、後年の「フライトナイト (1985)」などでもおなじみ。あの「魔人ドラキュラ (1931)」でもお馴染みの"Children of the Nights"と云うセリフは、ここでの伯爵とヒロインの2ショットでも披露されるが、これも元々は、ドラキュラ城での初夜を迎えたジョナサンに伯爵が言い放つ原作からの引用。一方、バリバリの怪人たる伯爵がヒロインらとダンスに興じるシーンなど原作ではあり得ないものだが、ちなみにここでのシワード邸でのダンスシークエンスは、ミーナ役のジャン・フランシスによる監修である。



製作スタッフ
Staff
関連作品 (抜粋)
Related Works "excerpts"
監督
Directed by
ジョン・バダム
John Badham
サタデー・ナイト・フィーバー Saturday Night Fever
ブルーサンダー Blue Thunder
ウォー・ゲーム WarGames
製作
Produced by
ウォルター・ミリッシュ
Walter Mirisch
ミッドウェイ Midway
ゼンダ城の虜 The Prisoner of Zenda
製作総指揮
Executive Producer
マーヴィン・ミリッシュ
Marvin Mirisch
第三暗黒街 The Human Jungle
ロマンチック・コメディ Romantic Comedy
原作
Based on the novel by
ブラム・ストーカー
Bram Stoker
ピラミッド The Awakening
白蛇伝説 The Lair of the White Worm
原作戯曲
Based on a play by
ハミルトン・ディーン
Hamilton Deane
魔人ドラキュラ Dracula
ジョン・ボルダーストン
John Balderston
ガス燈 Gaslight
ゼンダ城の虜 The Prisoner of Zenda
脚色
Screenplay by
W.D.リクター
W.D. Richter
ニッケルオデオン Nickelodeon
SF ボディ・スナッチャー
 Invasion of the Body Snatchers
撮影
Cinematography by
ギルバート・テイラー
Gilbert Taylor
オーメン The Omen
スター・ウォーズ Star Wars
編集
Edited by
ジョン・ブルーム
John Bloom
オルカ Orca
マジック Magic
美術
Production Design by
ピーター・マートン
Peter Murton
鷲は舞いおりた The Eagle Has Landed
ナイル殺人事件 Death on the Nile
特殊視覚効果
Special visual effects
アルバート・ウィトロック
Albert Whitlock
ザ・カー The Car
センチネル The Sentinel
衣装デザイン
Costume Design by
ジュリー・ハリス
Julie Harris
007 死ぬのは奴らだ Live and Let Die
ローラーボール Rollerball
音楽
Music by
ジョン・ウィリアムズ
John Williams
スター・ウォーズ Star Wars
スーパーマン Superman
キャスト
Cast
配役
Plays
関連作品 (抜粋)
Related Works "excerpts"
フランク・ランジェラ
Frank Langella
Count Dracula パリは霧にぬれて La maison sous les arbres
サンタマリア特命隊 The Wrath of God
ローレンス・オリヴィエ
Laurence Olivier
Prof.
Abraham Van Helsing
遠すぎた橋 A Bridge Too Far
ベッツィー The Betsy
ドナルド・プレザンス
Donald Pleasence
Dr. Jack Seward 007は二度死ぬ You Only Live Twice
ハロウィン Halloween
ケイト・ネリガン
Kate Nelligan
Lucy Seward 針の眼 Eye of the Needle
天使の失踪 Without a Trace
トレヴァー・イヴ
Trevor Eve
Jonathan Harker スキャンダル Scandal
父の祈りを In the Name of the Father
ジャン・フランシス
Jan Francis
Mina Van Helsing チャンピオンズ Champions
ジャニーン・デュビツキ
Janine Duvitski
Annie ジャバーウォッキー Jabberwocky
大列車強盗 The First Great Train Robbery
トニー・ヘイガース
Tony Haygarth
Milo Renfield ホロコースト Holocaust (tv)
ひと月の夏 A Month in the Country
テディ・ターナー
Teddy Turner
Swales 非情の町 Town Without Pity
ブロンテ姉妹 Les soeurs Brontë
シルヴェスター・マッコイ
Sylvester McCoy
Walter SFドクター・フー Doctor Who (tv)
クリスティン・ホーワース
Kristine Howarth
Mrs. Galloway ジャガーノート Juggernaut
ハノーバー・ストリート 哀愁の街かど Hanover Street
ジョー・ベルチャー
Joe Belcher
Tony Hindley 狼男アメリカン An American Werewolf in London
ドレッサー The Dresser
テッド・キャロル
Ted Carroll
Scarborough Sailor ケス Kes
フラッシュ・ゴードン Flash Gordon
フランク・バーチ
Frank Birch
Harbormaster 音楽殺人(未) Face the Music
ゲイバー・ヴァーノン
Gabor Vernon
Captain of Demeter 007 死ぬのは奴らだ Live and Let Die
ホロコースト Holocaust (tv)
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