Introduction　序盤アウトライン：

デビュー作にして文学界を席捲した作家のデクスター・コーネルは、大学教授として迎えられた４年間と云うキャリアの中でも新たな執筆への意欲を見せる事もなく、そんな情熱を失った姿に愛想を尽かした妻ゲイルとは離婚寸前の状態だった。年の瀬も迫るある日、デクスターに創作原稿を持ち寄っていた優秀な教え子のニックが、デクスターの眼前で自殺のようにも見える墜落死を遂げる。その夜、酒場で泥酔したデクスターは、彼を敬愛する女子生徒シドニーの女子寮に一泊した後、優れない体調の為に病院を訪れるが、医師の口から発せられた言葉は、遅効性の服毒によってその余命も４８時間と云う衝撃の宣告だった。更に、妻のゲイルまでもが殺害されると云う最悪の様相を呈する中、デクスターは、その第一容疑者として祭り上げられてしまう。余命も僅かと云う状況下、デクスターは、その真犯人を追跡すべく、教え子のシドニーとの二人三脚での行動を開始するのだがーー

Various Note　メモ：

正に四面楚歌の状況下に追い込まれる男の悪夢の顛末を描いた作品だが、抜群の効果を醸し出すモノクロによる冒頭シークエンスからクライマックスまで、極上の緊張感に終始すると云う秀逸なシナリオである。オリジナル作品の５０年「都会の牙」のアウトラインは、ある不正取引の公証人になった主人公が、事実関係を知る関係者の抹殺を図る黒幕に毒を盛られて余命僅かと云う中でクライマックスを向かえると云う内容だが、その主人公を助ける女性秘書と云ったキャラクターの挿入や、警察にやって来た息も絶え絶えの主人公が事件の顛末を述懐すると云うドラマ展開など、リメイクである本作との共通モチーフを多くは含んでいるものの、その主人公の迎える結末も決定的に違うもので、私生活も破綻しかかっていた中で妻が殺害されると云う伏線によって教え子（メグ・ライアン）とのロマンス色も強調される本作のシナリオとは、その印象も大きく異なっている。

本作が公開された直前とも云える時期に「インナースペース」で共演していたデニス・クエイドとメグ・ライアンだが、後の９１年に籍を入れる事になる２人（０５年現在、既に離婚して久しい）のコンビネーションは、何より素晴らしいもので、その公開当時には、直前の出演作「インナースペース」での微笑ましい競演がそのままの印象として残されていた為に、ここでの絶望的な状況下で展開されるシリアスなシナリオに於いても安堵感を与えられていたものである。ＶＨＳレンタルの全盛時代だった９０年前後の頃、秀作サスペンスとして俄かな人気を博していた本作だが、ＤＶＤメディアでのリリースも、世紀を越えてようやく陽の目を見ている。若手スタッフによる情熱と勢いでダイナミズムにも満ち溢れた見事なサスペンス・ミステリーとして昇華している作品。ロマンス度も高い。