Introduction　序盤アウトライン：

１９１８年、英国ノッティンガムシャー。若く美しい娘コンスタンスは、その容姿も端正なクリフォード・チャタレイ男爵との結婚によって幸福の絶頂を体験しようとしていたが、コンスタンスの歓迎パーティーの最中、開戦の報を受けたクリフォードが、新婚の日々を満喫する間もなく戦地へ赴いてしまう。やがて、ドイツ戦線からの帰還を果したクリフォードだったが、その姿は重傷による下半身不随の為に車椅子を余儀なくされる体になっていた。女性としての日々を過ごせずも、貞淑に振舞うコンスタンスだったが、おばのレディ・エバからの欲求に従うようにと云う助言なども受ける中、クリフォードまでもが愛人をもうける事に肯定的だった。クリフォードの世話人として未亡人のボルトンが来るようになったある頃、コンスタンスは、キジの養殖番として従事するオリヴァーとの刹那的な情事に耽るようになるのだがーー

Various Note　メモ：

マルク・アレグレ監督による５５年度同名作品の英語版リメイク作品。傷痍軍人の夫を持つ貴婦人が「愛人」との関係によって「性を解放」すると云う物語だが、近代までの貴族社会の性生活に於ける風俗と云うものを考慮すれば、ロレンスの時代に於いても革新的と云えるようなテーマではないもので、その衝撃は、愛人関係の２人が迎えるバラ色の結末により夫婦関係が完膚なまでに淘汰されてしまうと云う帰結部に集約されているように思われる。

文芸作家ロレンスと云う知名度故に時代性が強調される事も多々あるが、万華鏡のような側面を持つ社会倫理に一石を投じただけと云ったこの物語に時代性を考慮するなどと云う事もナンセンス極まりのない話。封建的な価値観を淘汰してしまうと云うモチーフだけを取り上げれば、そのロレンスの時代に於いての先見性にも疑問の余地はないが、飽く迄も普遍的であり続ける男女の関係が情緒豊かに綴られた物語だと捉えれば、古今東西に共通する普遍的なテーマ以外の何物でもない。苛むクリフォードの視点から提起されるモチーフに至っては、もはや、時代性云々ではなく十人十色のキャパシティーの問題なのである。