Introduction　序盤アウトライン：

ニューヨーク近郊。ＴＶキャスターのジェーンが暮らす湾岸沿いの街では、女性ばかりを狙う暴行殺人事件が多発していた。幼い頃に強姦された影響で目と耳の機能を失い言葉を発する事も出来なくなった妹トレーシーを目の当たりにしていたジェーンは、特別な怒りを覚える異常変質者を追い詰めるべく、自らの番組で情報提供を呼びかけるが、その成果も無く犠牲者の数は増える一方だった。そんなある頃、深夜に帰宅したジェーンは自宅高層マンションの地下パーキングで、ベルトも着用せず、そのシャツには血痕と思しき著しい汚れを残す不審な男を見かける。その同日に発生していた事件の被害者がベルトで絞殺されていたと云う事実を知ったジェーンは、以来、その不審な男をマークするようになっていた。やがて、砂浜での３名の犠牲者を出すと云う殺人事件の直後に、不審な男の車のタイヤが湿った砂で汚れている事に気付いたジェーンは、更なる核心に迫るべく、ハーバートと云う名で割り出された不審な男の部屋に侵入、決定的な証拠を手中に収めるのだがーー

Various Note　メモ：

予想外の大ヒットとなった「１３日の金曜日」と同じワーナーブラザースの配給、その公開も殆ど同時期で、夏の１３金、冬の本作と云った印象も残す作品だが、その内容は、正体不明のシリアルキラーに脅かされる顛末と云った印象も受けるコピーとは異なるもので、その正体も端から提示される連続暴行殺人鬼とジェーン・フォンダ風のイケイケ女性キャスターが対決すると云うスレンダーな顛末である。

短調系のスコアに依存してシークエンスを盛り上げると云うアプローチも実に古典的なもので、「暗闇にベルが鳴る」のような見えない犯人を推理すると云ったミステリー色も皆無のシナリオだが、実は、これが意外にも面白い。弁護士をする主人公の彼氏と云う白馬の騎士的キャラクターも取り敢えずは登場するものの、警察機構のキャラクターを始めとする協力者などは一人も登場させる事なく、主人公姉妹と犯人のサシの勝負に固執すると云う伏線らしきモチーフも登場しないシンプルなシナリオながらも、その緊張感が途切れないのである。

アパートの部屋で彼氏と共に殺害される女性、そして、恐らくは決定的な衝撃のカットは割愛されていると思われる浜辺での殺戮のシークエンスなど、トム・サヴィーニの真骨頂とも云える特殊メイクも一役買っている事には違いないが、基本的には、贅肉とも云える無駄な演出を排除した事によりストレートな緊張感の表現に成功していると云う作品である。今を時めくジェニファー・ジェイソン・リーが、初々しいヌードまでをも披露する迫力のクライマックスは見もの。ポスターやチラシなどの宣材のデザインも秀逸。余談だが、劇中で主人公カップルが足を運ぶ劇場映画は、ジョージ・Ａ．ロメロの「ゾンビ」である。